書評 「悲しみを抱きしめて」西村匡史著







今回のブログは書評と言う言葉が適切ではないような気がしています。かといって単なる本の紹介と言うわけでもありません。30年前の凄惨な事故に巻き込まれた方々の壮絶な人生の出来事を紹介するということになるでしょうか。そしてこのような事故を二度となくすこと、事故を風化させないためにというのが今回ブログを書いた趣旨になります。

この本は先日訪れた熱田図書館のイベント企画で偶然手元にやってきました。その時の詳細はブログにて

2016.09.05
熱田図書館で素敵なイベント企画に出会った

封筒に入っていてタイトルがわからない本を2冊借りたうちの1冊にこの「悲しみを抱きしめて」が入っていました。もう1冊は文章が稚拙で内容も興味がなかったので数ページ読んで読むのやめました。あえてその本のタイトルはここでは触れません。

もし熱田図書館でこの企画なかったら私はこの本と出会っていません。図書館スタッフお勧め図書の一覧にあっても手に取っていなかったと思います。興味がなかったわけではありませんが凄まじい事故だったので、そのイメージが強くとても自分から読む気にはなれませんでした。でも今回このような形で「悲しみを抱きしめて」を読むことができて図書館のスタッフの方々に感謝しています。

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1985年8月12日に起きた日航機墜落落事故は私の中でもいまだに鮮明な記憶として残っています。なぜなら、当時中学校1年生だったこの年の夏休みの宿題で新聞をスクラップすると言う自由研究をしておりました。夏休みの中の1番大きな事故がこの日航機墜落事故でした。新聞各紙をスクラップするのはもちろん、飛行機が墜落した御巣鷹周辺の地図を取り寄せ標高ごとに色分けをしました。この自由課題を見た地理の先生がとても褒めてくれたのをよく覚えています。そういったわけでこの日航機墜落事故は私の中でとても記憶に残る大きな事故となっていました。ただし30年が過ぎ記憶から薄れていたところへ今回の本を読むことになります。

この本の中には事故で3人の娘を一度に失ったT夫妻、9歳の息子を失ったMさん、身ごもりながら夫を亡くしたOさん、新婚半年の妻を亡くしたKさんなど様々な境遇の方々のエピソードが紹介されております。特に幼くして命を失った家族のエピソードを読んでいたら涙が溢れて文字が滲みしばらく読むことができませんでした。こんなに涙が溢れてる本はここ最近読んでおらず久しぶりでした。

ただこの本はノンフィクションなので「この本は泣ける!感動!」みたいな種類の本ではありません。当事者とは比べ物になりませんがそれでも事故によって変わってしまった人生を多少なりともうかがい知ることができました。

もし自分がこういう立場なったら果たしてまともに生活を送れるだろうかと考えてしまいます。普段何気なく朝起きて妻や娘たちが笑顔で「おはよう」と挨拶してくれるこの日常は決して当たり前ではなく奇跡なのだと改めて思い直すことができました。

一方で神様はなぜこんな酷い仕打ちをしたのだろうとも考えさせられました。世の中は必ず「原因と結果の法則」で成り立っていると言われていますが、こういった事件を見ると果たして本当なのだろうかと考えさせられてしまいます。

このブログをここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。もし最後まで読んでいただいたなら、ぜひこの「悲しみを抱きしめて」も読んでいただきたい。図書館には所蔵されておりますし、Amazonならすぐに届きます。「この本泣けるから読んでみて」というのではなく、こういった悲惨な事故を繰り返さないため、風化させないために1人でも多くの方に読んでいただきたいと願っています。

ほな!