書評「下り坂をそろそろ下る」平田オリザ著







この「下り坂をそろそろ下る」は愛知の文具王フミヒロさんのブログで紹介されていおり、早速読みました。フミヒロさんの紹介する本はハズレがないので効率よく読書ができます。

下り坂をそろそろ下る2

本の内容紹介 Amazonより
◆「これからの日本」をどうするか?◆
人口減少、待機児童、地方創生、大学入試改革…。

日本が直面する重大問題の「本質」に迫り、あらためて日本人のあり方について論考した快著!

反アベノミクス派の皆さんでさえも、あまり口にしない大切な事柄がある。子育て中のお母さんが、昼間に、子どもを保育所に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指をさされない社会を作ること。

私は、この視点が、いまの少子化対策に最も欠けている部分だと考える。経済は重要だ。待機児童の解消は絶対的急務だ。しかし、それだけでは、おそらく非婚化・晩婚化の傾向は変わらないし少子化も解消されない。

雇用保険受給者や生活保護世帯の方たちが平日の昼間に劇場や映画館に来てくれたら、「社会とつながっていてくれてありがとう」と言える社会を作っていくべきなのではないか。失業からくる閉塞感、社会に必要とされていないと感じてしまう疎外感。中高年の引きこもりは、社会全体のリスクやコストを増大させる。(以上、本文より)

◆私たちは、そろそろ価値観を転換しなければならないのではないか◆

他者の権利に嫉妬するのではなく、「生活がたいへんなのに映画を観に来てくれてありがとう」と言える社会へ―。若者たちが「戻りたい」と思える「まちづくり」とは?
日本が少子化問題を解決するための方策とは?

あたらしい「この国のかたち」を模索する。

この本「下り坂をそろそろ下る」は次の一文で始まります。

まことに小さな国が、衰退期をむかえようとしている。その列島の中の一つの島が四国であり、四国は、讃岐、阿波、土佐、伊予に分かれている。讃岐の首邑は高松。

「坂の上の雲」の冒頭の一文を著者が書き換えた贋作ですが、日本はこれから間違いなく衰退期を迎えます。特定の産業ではなく日本人を相手にしたほぼ全ての産業が衰退産業になります。ただ、そんな状況の中でも生き延びる術はあります。この本では地方をどう復興していくかについて詳しく書かれています。

この本で一番「ほぉ〜」と感心したのは箇所は少子化についての考察。

「日本中の観光学者たちが口を揃えて『少子化だからスキー人口が減った』と言う。しかし、劇作家(著者)はそうは考えない。『スキー人口が減ったから少子化になったのだ』」
かつて20代男子にとって スキーは女性を一泊旅行に誘える最も有効で健全な手段だった。それが減ったら、少子化になるに決まっている。当たり前のことだ。もちろん、スキーはひとつの喩えに過ぎない。だが、ここにはある種の本質的な問題が隠れていると私は思う。

言われてみればその通りですが、なかなかこの視点は鋭く思いつきません。

巻末にはこれからの日本にとって大事なことが書かれていました。

本当に、本当に、大事なことは、たとえば平日の昼間に、どうしても観たい芝居やライブがあれば、職場に申し出て、いつでも気軽に休みが取れるようにすることだ。職場の誰もが、「あいつサボっている」などと感じずに、「なんだ、そんなことか、早く言ってくれよ。その仕事なら俺がやっておくよ。舞台を楽しんできな」と言い合える職場を作ることだ。
 それが、私が考えるコミュニケーションデザインであり、コミュニティデザインだ。そのためのコミュニケーション教育だ。
 競争と排除の論理から抜け出し、寛容と包摂の社会へ。道のりは長く厳しいが、私はこれ以外に、この下り坂を、ゆっくりと下っていく方法はないと思う。

 
全く同感で、これから働く人口もどんどん減り、生産性をあげ、長時間労働をなくし、好きなことをしながら仕事をしていかないと日本は生き残れません。働くもの全員が同じ意識を持って仕事をしていかないと、日本は世界から取り残されることになります。

電通の一件があってから、一気に風潮は変わりました。ただし、まだ表面的なことばかりなので本質的な問題を解決する必要があります。トップの意識改革はもちろん、働くもの全員が意識を変える必要があります。一朝一夕では変わりませんが少しずつ日本人が働きやすく過ごしやすい環境になればと願っています。

ほな!