書評「会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で手に入れた」齋藤正明著







人生の師匠であり、愛知の文具王としても知られているフミヒロさんが先日ブログで紹介していたのが「会社で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ」。フミヒロさんのオススメする本はハズレがないので素晴らしい読書生活が送れています。ただし、読む速度が追いつかず、読みたい本がどんどん溜まるのが玉に瑕。

今回の「会社で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ」も素晴らしい内容でした。何が素晴らしいって作者が体を張って40日間マグロ船に乗って得た凝縮された体験をわずか1時間ほどで手に入れることができます。「会社人生で必要な知恵」というか、「人生そのもので必要な知恵」が、この「会社で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ」に詰まっていました。

久々にたくさん紹介したいフレーズがあります。マグロ船の親方、船長、機関長、漁師のみなさんが著者に語った言葉を紹介します。大分弁なので説教臭くないのもこの本の良さ。

著者が船酔いで苦しんでいるときに一言。

親方…「人間はの、幸せのなかにいるときは、幸せに気づかんもんよ。マグロだって、海にいるときには、自分の幸せにはきっと気づいておらんち。おいどーらが釣り上げると、マグロはバタバタと大暴れしよる。海から引き離されて初めて、海のありがたみがわかったんじゃねーかの?齊藤(著者)も、陸から離れて、陸にいられることのありがたみがわかったんじゃねーんか?」

マグロが全然捕れなかった時のモチベーションの保ち方について一言。

機関長…「あー?いいことが起きたら喜んで、嫌なことが起きたら暗くなる。それじゃ犬と同じじゃねーか。人間はの、感情をコントロールできるんど」
「マグロが捕れんときこそ、感情をコントロールしぇんと人間ダメなんど。齊藤はそげーなことがわからんのか?本当にバカじゃのう」

マグロを捕るときのプロセスについて一言。

船長…「とにかく、『結果』ばかりに気を取られると、その途中で見られるはずだった、いろいろなおもしれーもんを見逃すんど。この途中にあるおもしれーもんは、後で役に立つこともいっぱいあるんど」

マグロが全く捕れなかったときの気持ちの持ちようについて一言。

漁師…「おいどーらは、おいどーらにできることをすべてやったんど。それから後のマグロが捕れるかどうかなんて、海が決めることど。齊藤ら陸の人たちは、人間ではどうにもならんことまで、なんとうしようとしちょる。それが疲るる原因よ」

努力に対しての一言。

漁師…「『努力』っちゅう言葉には、どっか『結果』という見返りを期待しちょるように聞こえるの。でもの、努力はたいてい報われんのぞ。最初から報われる期待をして努力すると、『努力したのに……』と、すぐにあきらめよる」

完璧主義について一言。

船長…「それは齊藤のうぬぼれど。『自分はスーパーマンだ!』と思いすぎちょるから現実とのギャップに苦しむんど。最初はの、『自分は何もできないダメなやつだ』と認めることからど。そこから一歩ずつ、自分が得意だったり、好きなことを磨くんど」
「でもの、いくら自分を磨いたって、人間できないことばかりぞ。さっき言ったとおり、おいどーも海に出るとできないことばかりど。『完璧』を目指せば目指すほど、自分にできないところが目立って落ち込む。結果、完璧とはより遠くなるんど」

自分にはどんな能力があるのかという問いに対して一言。

船長…「何かの分野で成功した人は、もともと能力があるからうまくいったわけではなく、うまくいったってことは、きっとあの人には能力があったんだろうと、後で理由づけをされちょるだけど。だから、『能力』なんちゅーものは、考えても無駄ど」

他人からの評価について一言。

親方…「それは他人からわかってもらおうとするからつれぇんよ。自分が自分の仕事に楽しさと誇りを持てば、あとは世話ねぇ話じゃ」

人の短所、長所について一言。

親方…「結局の短所は見方を変えれば長所で、長所は見方を変えれば短所なんど。齊藤は、悪いとこばっか見よるから悩むんど。自分の悪いとこばっかり見るやつぁ、他人に対してしも悪ぃとこばっか見るんど」

後ろ向きな考えになった場合について一言。

漁師…「後ろ向きになるっちゅーのは、危険を感じる能力ど。いつでも前向きな人やらが船長をやると、絶対無茶をしよるから船があぶねーんど。それにの、後ろ向きになることがあるやつでないと、落ち込んでる人の気持やらがわからんど」

失敗したときについて一言。

親方…「失敗はの、誰しも楽しいもんじゃありめーが。でもの、失敗しないでうまくなるなんてことはありえんのど。自転車だって、最初のうちは、何度も乗るのに失敗したから乗れるようになるんじゃろ?新しいことを始めようとしたら、絶対に失敗は避けられん。『失敗がない』というのは、長い目でみたときには一番の失敗になるんど」

著者が描いたマグロの絵が全然違っていたことについて一言。

漁師…「人はの、起きて目が開いちょるからといって、見えるものを正しく見ちょるわけではねぇ。齊藤のように、かなりいい加減に見ちょる。正しく見ちょかんと、目の前にチャンスがあってもそれに気づかず通り過ぎるんど。せっかくマグロ船に乗っちょるんじゃから、しっかりとみちょかな損ぞ」

将来どうなるかについて一言。

親方…「『将来、どんな風になりたいか?』っちゅー理想を、大体でもええから持っちょかんと、頭の中は『なりたいものだらけ』になりめーが。でも人間、そうそう万能に何でもできるようにはなりゃあせん。結局どれも中途半端になるんど。これが『自然の力』だけに任せた結果じゃ」

仕事を成功させるためにどうしたらいいのかについて一言。

親方…「要はの、必修科目のうち、合格点に足りない科目があると、ほかがどんなにええ成績を取っちょっても、うまくいかんようになる」

船での不便な生活について一言。

親方…「携帯電話、コンビニ、病院、便利なものが多すぎるんど。たった100年前までは、飛行機もクーラーもねぇんど。それでもみんな、立派に生きてこられたじゃねーか。下手に携帯電話ができたおかげで、余計、みんな待ち合わせどおりに来んよーになったんじゃねーか。便利になるとの、結局その分だけ人はサボるんど」
「『便利になれば幸せになれる』、そんなん全部幻ど。むしろ、不便なほうがみんなで助け合ったりして、心のなかに幸せを感じるし、難しいこともできるようになるんど」

海賊に襲われないと思う自信の根拠について一言。

親方…「自信に理由も何もあるかい!信じりゃええことじゃねーか!『信じる』っちゅーんは、『割り切る』っちゅーことじゃろ?本当に何とかなるかなんて、わかるわけねーんど」

定期的に他の船の人たちと持ち物を交換することについて一言。

親方…「船で使うちょるもんに、もともと自分のモンなんてねーんど。ビデオやらも、こっちからやると、向こうからもくんのよ。マグロが捕れる場所を教えてやるんだって、同じことど。自分から出すものをケチると、何も入ってこんよーになる」

他愛ない挨拶がわりの会話について一言。

親方…「あんまり素っ気なく返事をすると、話しかけにくいやつと思わるるど。赤道にいるから暑いことぐらい俺でもわかっちょる。でもの、最初に話しかける言葉はあいさつじゃ。あいさつで出鼻をくじかれると、次に何も話せめーが」
「連想ゲームをすんのよ。『暑いね』と言われたら、『暑い』で思いつくことを話ゃええんじゃ」

他人の見方について一言。

船長…「『仕事が丁寧なやつ』は、たいてい『仕事が遅い』。ひとつのことを見て、長所として受け取るか、短所として受け取るかの違いだけでねーんか?だったら、長所として受け取ったほうが、お互いに気持ちよかろう。他人の仕事を見て、できないことを指摘するのは誰でもできんど。でも、昨日までできなかったことが、今日、できるようになったのを気づいて褒められるのは、每日見てるおいどーにしかできねぇ」

女性にモテる漁師にその秘訣を聞いたときの一言。

漁師…「こっちがしゃべるより、むしろ、相手の話をちゃんと聞いてやるほうが、ずっと大事じゃ。何が悩みで、どんな解決方法が相手に合うんかは、よぉーく話を聞かんとわからん。相手の話を聞かんうちから、アドバイスをするのは、マグロをよう捕れん船と同じじゃ。海は広れぇ。その広れぇどこかにマグロが泳いじょる。どこをマグロが通るかの予測は、『仲間の情報』やらを頼りにする。何にも情報がねぇなかで縄を流しても、マグロなんて捕れめぇーが。でもの、人間関係では、マグロがどこにいるのかも読まず、縄を流すようなことをしよる」
「そうじゃ。アドバイスなんて、誰でも思いつくんど。じゃから、ええアドバイスなて考える必要はねぇ。大事なのは、どのアドバイスが一番伝わるかを見極めることじゃ」

タイトルに偽り無く、人生で必要な知恵はマグロ船に乗ればわかると思います。今までマグロ船には全く関わりがありませんでしたが、一気に興味が沸きました。ただし、サーフィンの波待ちのときでさえ酔う体質なので、マグロ船など絶対に乗りませんが。

寿司屋で美味しいマグロが食べられるのも、こういった方々のおかげなんだなと。寿司屋でマグロを食べるときには、今までよりもさらに感謝して美味しく食べられそう。

これからは、この「会社で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ」を定期的に読み直して、人生のバイブルにします。会社勤めの方はもちろん、万人にオススメできる一冊。

ほな!