ノマサラ

書評「生産性」伊賀泰代著 この本を読んで色んなことを考えた

伊賀泰代氏(ブロガーちきりん)の著書「生産性」を読了しました。いくつも頷くポイントがありましたが、今回はグサッと刺さったワンフレーズを取り上げます。

本当の意味で仕事ができる人というのは、少ないインプットで高い成果の出せる生産性の高い仕事のやり方を考案し、その仕事が他の人にも可能になるよう言語化し、移植できる人です。そして自分自身は、どんどん違う仕事にチャレンジしていく人のことです。「自分にしかできない仕事」にこだわり、その仕事に忙殺されて他の新しい仕事にチャレンジする余裕を持てず、何年も同じやり方で同じ仕事を続ける人を「できる人」と呼ぶべきだとは、私にはとても思えません。

我が人生の師匠フミヒロ氏も「自分ができる仕事は自分でしちゃダメだよ」と仰っていました。自分ができる仕事は言語化、文章化し誰にでもできるようにすることが生産性をあげる重要なポイント。肝に銘じます。

最近は働き方改革という名のもと残業削減や労働時間短縮が叫ばれていますが一向に改善する気配はありません。残業時間の上限も繁忙期は100時間未満までということで政府、経団連、連合が合意してしまいました。月100時間ということは1日5時間の残業を毎日ずっと行うということ。もしこれが続けば過労死するか身体を壊します。

繁忙期の残業100時間「未満」、政労使が合意 過労死遺族や野党の批判に配慮

また先日発表された日本人ひとり当たりの労働生産性は先進国の中で27位と最下位に近い順位でした。働いている時間は長いのに成果が出せていません。電通で働いていた女性が月100時間を超える残業とパワハラで命を経った事件を契機に随分と働き方改革の機運が高まったような気がします。ただし、時間外削減を叫んでも仕組みが変わらなければ、結局は持ち帰って仕事をしたり、プレッシャーで潰れるかのどちらか。

なぜ、海外と比べて労働時間が長いのか色々思いを巡らせて様々な情報を集めていたら、「これだ!」と言う記事を見つけました。まさに無駄な時間を増やす理由の核心をついており、腹落ちしました。他の会社はどうかわかりませんが今の仕事がうまく進まず徒労に終わっているのはまさにこの状況でした。

2017年働き方改革のツボは「権限・スキル・情報」の集中

「権限だけあるがスキルも情報もない人間が、権威を確保するためにムダな自慢話や叱責などを行って時間を浪費する」「権限だけあるがスキルも情報もない人間が、分からないままに判断するのが怖いので執拗に詳細の報告を求める」というように、上席にいる人間の「せい」でダラダラと時間がかかっているケースが多いのだと思います。

さらに問題なのは、保守的な企業の場合には、情報とスキルを握っている現場の発言権が弱く、最新のスキルと情報がない「過去に生きる」存在の幹部だけがやたらと喋っているというような会議があることです。これこそ、壮大な時間のムダと言えます。

90年代までの日本企業は、このような長時間労働はしていませんでした。国際化や形式主義的なコンプライアンス重視が進んでいなかったとか、要員に余裕があったというような解説がされることが多いようです。ですが、実は時代の変化スピードがそんなに速くなかったので、現場と幹部の「スキルと情報の逆転現象」が、それほど深刻ではなかったために、何でも「話が早かった」ということが大きいのではないかと思います。

 
ただし、この状況を無くすのは本当に難しい。現在、伝統的な保守的企業の場合、上層部にいるのはバブルを過ごしてきたか、バブル時代に入社した世代で、現場で実務をして情報とスキルを握っているのはバブル以降の就職氷河期に入社した世代。入社した時の危機感も入社してからの勉強量もまったく違うので話が噛み合わないことが多く、いつまで経っても会話は平行線のまま。思考停止していることにも気づかず無駄に詳細な資料を求めてきます。これではどれだけ時間があっても足りません。

仕事において新規のイベントを構築するよう求められますが、新しい取り組みをするにはヒト・モノ・カネが必要で要する時間は既存のイベントの数倍〜10倍以上かかります。にも関わらず「経費がかからず、売上が取れて、集客のあるイベントを探してこい」と無茶難題をふっかけられ、やっとのことでそれに近いイベントを探して概要を書いた企画書を提出したら「こんな企画書では試算ができない。同規模の同業他店の実績を調べろ」と言われます。言うのは簡単ですが調べるとなると取引先に確認し、同じ規模の店舗で開催した実績があるかを問い合わせ、実績を聞かなければなりません。実績があったところで、会期や販促策も違えば、集客策も違うため何の参考にもなりません。そのことを伝えても「それを調べるのが仕事だ」と突っ返されます。

概要の企画書で経費や目標値がどの程度なのかを確認し、やるのかやならいかを決めて、もしやるのであればその目標を達成するにはどうしたらいいのかを考えていくのが本来の仕事だと思います。参考にならない同業他店の実績を調べるのに何時間もかけるのであれば、どんな施策をすれば集客できて売上があがるのかを考えたほうが生産的なのは間違いありません。

こういった無駄な仕事をしている限り売上も生産性もあがらず残業だけが増える一方。売上が悪いと経費削減の一環として時間外削減するように言われるためサービス残業が増えていき、能率が上がらずさらに売上が下がり時間外が増えるという負のスパイラルに陥ります。

おそらく、この状況は多くの日本企業で蔓延していることだと思います。1日も早くこういった状況を打破しなければ日本は間違いなく後進国になってしまいます。そうならないためには経営者、管理者は本をたくさん読み、いかに生産性を上げるかを真剣に考えなければなりません。

我が人生の師匠の読書ブログで残業対策本を一挙9冊取り上げてくれています。師匠のオススメ本にハズレはありませんので、みんなで読みましょう。

1日も早くライフワークバランスの取れた日本人が一人でも増えることを願っています。

ほな!

モバイルバージョンを終了