東京駅の丸の内出入口にある美術館、東京ステーションギャラリーで開催されていた吉村芳生展に行ってきました。1/20(日)の最終日にギリギリ間に合いました。この美術館は床面積は広くはありませんが、2フロアあるのでそれなりの作品が展示できます。
東京ステーションギャラリーは東京駅丸の内北口改札になり、とても立地がよく便利なので出張や旅行のついでに気軽に立ち寄ることもできます。今回の吉村芳生氏の展覧会は友人のホラノコウスケ氏に紹介いただきました。数多くのアート展に行かれており、3つほどオススメいただいた中で一番興味があり行くことに。
緻密・精密な鉛筆、色鉛筆の作品に圧倒されました。一体、描くのにどれだけの時間、労力、集中力が必要なのだろうかと考えると脳がクラクラします。ひたすら金網を17m描いた作品をはじめ、写真のような自画像、藤やバラ、コスモスなど実写のような絵作品や新聞に自画像を描いた作品など、どれも素晴らしく感動しました。
特に東日本大震災の記事が載っている新聞に自画像を重ねた作品は吉村氏の表情にメッセージが込められており、社会派芸術作品と言えるでしょう。
最終日ということもあって開館前に15名ほど並んでいました。ただ、会場内は思ったよりも混んでおらず、ゆっくりと観ることができました。館内は撮影禁止になっているため、作品を撮ってSNSにアップすることができません。
こんなに素晴らしい作品を撮影禁止にしてしまうのは本当にもったいない。撮影フリーにすれば訪れた人は間違いなく撮影してインスタグラムやFacebookなどにアップして、この展覧会を多くの人に知ってもらうことができたはず。そういう意味では残念でなりません。仕方なくモニターに映っている映像を撮影してきましたが…。
東京ステーションギャラリーでの展示は終了してしまいましたが、今後もし各地の美術館を巡回されるときは撮影可にして、多くの人に吉村氏の芸術作品を知って欲しいと切に願います。
超絶技巧?そんな単純な言葉で説明することはできません。延々と17メートルにわたって描かれた金網、1年間毎日描き続けた365枚の自画像、1文字1文字をすべて書き写した新聞紙――。吉村芳生(1950-2013)が生み出した作品は、どれも超絶リアルでありながら、見る者の度肝を抜く凄味を感じさせます。本展は東京初となる回顧展で、初期のモノトーンによる版画やドローイング、後期の色鮮やかな花の作品、生涯を通じて描き続けた自画像など、600点を超える展示品によって吉村の全貌を伝えます。ただ上手いだけの絵ではない、描くこと、生きることの意味を問い直す真摯な作品の数々を、ぜひその眼で目撃してください。
超絶技巧? それとも?
新聞紙の上に鉛筆で描かれた自画像。よく見ると、じつは新聞紙そのものが、鉛筆で一字一字描かれている! 吉村芳生の代名詞とも言うべき〈新聞と自画像〉シリーズです。花や風景をテーマにした作品でも、吉村の緻密な描写は一貫しています。一見すると、徹底的に対象に肉迫する超絶技巧の写実主義かと思えますが、吉村の作品は、単純に対象を熟視して描かれたわけではありません。超絶技巧を超える制作のヒミツとは。ぜひ会場で発見してください。
金網は続くよ、どこまでも
これは絵画と言えるのでしょうか?金網だけを延々と忠実に写し取った作品。どこか破れているとか、蜘蛛の巣がかかっているとか、そんな変化は一切なし。ただひたすら金網が続きます。その長さ何と17メートル!なぜ17メートル?じつは、この作品を発表した画廊の壁の長さが17メートルだったのです。もっと大きな会場だったら、おそらくもっと長くなっていたことでしょう。また、自画像シリーズの中には、365点組のものがいくつかあります。これもなぜ365点だったのか、と問われれば、吉村は1年で区切りが良かったから、と答えたことでしょう。意味があるのか、ないのか、よくわからないこの不思議な継続は、吉村作品の大きな魅力です。
2007年、57歳で現代アート・ シーンに再登場した奇跡の画家
1950年、山口県に生まれた吉村芳生は、版画のフィールドで内外の美術展に出品を重ね、いくつかの美術館に作品が収蔵されるなど、高い評価を得ましたが、その評価は一部にとどまっており、決して知名度の高い作家ではありませんでした。1990年代以降は、山口県展や画廊での個展が中心の地道な活動を続けていました。それが一変したのは2007年のこと。吉村が57歳のときのことです。この年、森美術館で開催された「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展に出品された作品群が大きな話題を呼びます。その後、各地の美術館で作品が展示され、特に山口県立美術館で開催された個展には多くの観客が押し寄せました。遅咲きの花として、快進撃を続けていた吉村はしかし、2013年に突然亡くなってしまいます。
吉村芳生の全貌を紹介する展覧会
現代アート界の異色の画家・吉村芳生の全貌を62件600点以上の作品により3 部構成で紹介します。日常生活の中で目にするありふれた風景をモノトーンのドローイングや版画で表現した初期の作品群、色鉛筆を駆使してさまざまな花を描いた後期の作品群、そして生涯を通じて描き続けた自画像の数々。膨大な時間を費やして制作された吉村の驚くべき作品群は、写実も超絶技巧も超越し、描くこと、表現することの意味を問い直します。本展は、中国・四国地方以外の美術館では初めて開催される吉村芳生の個展となります。
開館時間
10:00 – 18:00
金曜日 10:00 – 20:00
*入館は閉館30分前まで休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日/ただし会期最終週、ゴールデンウィーク・お盆期間中の月曜日は開館)、年末年始、展示替期間
*詳細は各企画展のページをご参照ください。
ほな!おおきに!