岡崎ビジネスサポートセンター、通称OKABIZ主催 「里山資本主義」「デフレの正体」の著者、藻谷氏と考える「日本・岡崎の将来展望と地方の中小企業可能性」という講演会に行ってきました。OKABIZが主催なので参加費はなんと無料。藻谷氏の話が無料で聴ける機会はなかなかありません。
藻谷氏の「里山資本主義」「デフレの正体」はどちらも読みましたが、人口動態統計から割り出された日本の経済の現状をわかりやすく説明しており、目から鱗が落ちる良本。
里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
今回の講演ではまず冒頭で、みなさんが抱いている「イメージ」や「空気感」は事実と違うということを説明されました。日本の殺人犯罪件数は激減しており、特に若者の犯罪は減っています。ただし、65歳以上の老人の犯罪は減っていません。私たちが描いているイメージはたいてい50年前の状態とのこと。時代はどんどん変わっているのにイメージは古いまま。気をつけなければなりません。
その次に、岡崎の2010年〜2015年の人口動態をはじめ、東京、中国、米国、下伊那郡平谷村の5年間の人口動態を解説されました。65歳以上が2割近く増えているのが怖い…。
一方、過疎の村ではすでに高齢者さえ減っており、若年人口が増えています。こう環境になると子どもに優しい社会が形成されます。
この中で一番ヤバいのは東京だということがわかりました。65歳以上の人口が激増しており、病院をはじめあらゆるものが足りない状況がすでに起こっています。東京は出生率が1.1しかなく最も住みにくい街なのに、なぜか人口が一極集中しており、様々な問題を抱えています。
これからの日本で商売をして儲けるにはシニアマーケットを徹底的に攻めることしかありません。最近は猫も杓子も「インスタ映え」と言っていますが、所詮、人口の少ない若い女性がターゲット。そうではなく、いかに65歳以上の高齢者にささるマーケティングをするかがカギとなってきます。岡崎でシニアマーケットの開拓に成功すれば、日本中どこでも成功でき、さらに今後遅れて高齢化社会がやってくる中国でも成功できます。所々で藻谷氏がクイズをするのですが、参加者の回答が毎回ほぼバラバラ。それだけ人口動態を日本人自身が把握していないということがわかりました。
終盤は貿易収支の話になりました。最初は国名を隠して、どこの国かを当てるクイズがありましたが、ここでも回答はバラバラ。社会の授業で勉強したことなので、本来は当たるはずなのですが、それがみなさん当たらない。普段から新聞を読んで経済ニュースにアンテナを立てていないと、こういう事態になります。
みなさんも、どこの国か、まず考えてみてください。突出した一番黒字・赤字の国はどこでしょうか。
一番黒字の国はアメリカ、続いて中国、香港、台湾、韓国、シンガポールなどのアジアの国口、ヨーロッパではオランダ、英国、ドイツ、ベルギーは黒字になっています。一方、日本が赤字の国は中東、オーストラリアなどの資源産出国。石油や鉄鉱石など大量の資源を買っているため赤字になっています。そして、ヨーロッパの国々の中でもブランドが強いスイス、イタリア、フランスなどは赤字。日本では高級時計が売れており、ほとんどのメーカーはスイスにあるため、赤字となっています。イタリア、フランスはファッションアイテムや食材などを買っているため赤字に。これらの貿易収支は永らく変わっておらず、ずっとこの状態が続いています。これを見れば、これから日本が生き残っていくためには資源を発掘するか、ブランドを作るかが有効な方法だということがわかります。
今回の講演では知っているようで間違って認識していたことがたくさんあり、改めて数字で把握するということの大切さを知りました。また日本の常識は世界の非常識であり、品質を上げても買い叩かれる現状や、現金主義で電子マネーやクレジットカードが使えない今のままでは早々に立ち行かなくなります。1日も早く、みんなが気づいて世界のスタンダードに合わせて変えていかなかれば日本は沈没していきます。
藻谷氏招いてくれたOKABIZのセンター長である秋元氏に感謝、感謝。
講演が終わった後は一緒に参加した人生の師匠であり愛知の文具王でもあるフミヒロ氏と釜春うどんで「チーズもろこしうどん」を食べました。ここのうどん屋は何を食べても絶品ですが、特にこの「チーズもろこしうどん」は激ウマ。遠くから出かけてでも食べる価値あり。為になる話を聴いて、尊敬できる師匠と楽しく話をしながら食事ができて、本当に幸せで有意義な時間を過ごすことができました。
なお、明後日には藻谷氏の新刊が発売されるので、早速予約しました。
藻谷氏の話は内容も去ることながら、話のテンポもいいし、「えっと〜」「あの〜」「なんと言いますか〜」といった余分語が一切なくとても聴きやすい。相当頭の回転が速いのだと思います。もし機会があれば、ぜひ藻谷氏の講演を聴いてみてください!
講演概要
現在、多くの課題を抱えている、日本経済。 また、働き方や企業の在り方や考え方も大きく変わろうとしています。そんな中、経済の現状をしっかり把握し、将来に目を向けるということは 事業を進めていくうえでも、とても大切なことです。
今回、2014年に一度オカビズでご講演いただき大好評だった 「里山資本主義」「デフレの正体」で有名な藻谷浩介氏を招き、 日本・岡崎市の将来の展望 そして、地方の中小企業の可能性についてお話し頂きます。地域振興や人口成熟問題に関し、 精力的に研究・著作・講演を行っている藻谷氏と これからの岡崎市・地方・中小企業の可能性について考えていきます。
■講師プロフィール
藻谷 浩介(もたにこうすけ)氏
(株)日本総合研究所主席研究員 (株)日本政策投資銀行 地域企画部特任顧問 特定非営利活動法人 ComPus地域経営支援ネットワーク理事長
山口県生まれの54歳。平成合併前3,200市町村のすべて、海外90ヶ国を自費で訪問し、地域特性を多面的に把握。地域振興や人口成熟問題に関し精力的に研究・著作・講演を行う。2012年より現職。近著にデフレの正体、里山資本主義(共に角川oneテーマ21)、金融緩和の翼(集英社新書)、しなやかな日本列島のつくりかた、和の国富論、観光立国の正体(共に新潮社)、日本の大問題(中央公論新社)。
ほな!おおきに!