これからの時代を生き抜くヒントが満載!ユヴァル・ノア・ハラリ自身が語る最新作「21Lessons」について







「サピエンス全史」「ホモ・デウス」などのベストセラー作家である知の巨人 ユヴァル・ノア・ハラリの最新作「21Lessons」。「サピエンス全史」は過去についての考察、「ホモ・デウス」は少し遠い未来についての考察でしたが、「21Lessons」では現代社会や近未来に焦点を絞って書かれています。

「21Lessons」の出版に合わせてユヴァル・ノア・ハラリ本人がYoutubeで語っており脳内にインプットがてら文字起こしをしてみました。とてつもなく重要なことを語っていましたので、文字が苦にならない方はこのブログを読んでみてください。文字が苦手な方はYoutubeを観てください(と言っても字幕なので結局は文字を読まねばなりませんが)。これからの20年を生きるヒントが詰まっています。

 

最新作「21Lessons」について

私はユヴァル・ノア・ハラリ、歴史学者です。第1作目は「サピエンス全史」です。非力な霊長類が地球の支配者となる過程を綿密に考証しました。第2作目は「ホモ・デウス」です。人類の未来を遠望した著作です。いつの日か人間が神となる可能性や知能と意識の行末について考察しました。

そして本書「21Lessons」では現代社会や近未来に焦点を絞っています。情報があふれる現代、明確さが力になります。権力者たちは情報を妨げることよりもデマやたわごとを垂れ流すことに熱心です。

今何が起きているのか?最も重要な課題と選択は?注目すべきことは?考える余裕さえない人が何十億もいます。

やるべきことが多過ぎるのです。仕事や子育て、老いた親の介護。残念ながら歴史は無情です。あなたの事情がどのようなものであれ顧みられません。

子育てに夢中でも今後の展開から逃れることはできません。不公平な話ですがそれが歴史というものです。本は衣食住を提供できませんが明確さは提供できます。

世界に公平さをもたらす助けになれます。この本が契機となってたとえ少数であっても人類の将来を考える人が増えることを願います。

 

政治家たちは21世紀の新しい現実に対して十分な準備ができているでしょうか?

ほとんどの政治家は昔話を売り込むばかりで未来を語ろうとしません。民衆が激変を嫌い、未知のものを恐れるからです。彼らが望むのは安定と確固たるアイデンティティです。

そこに人生の意味を見出すのです。そのため政治的風潮は未だに懐古的で未来より過去を重視します。たくさんの国々、アメリカ、イギリス、ロシア、インドやポーランド、ナショナリズムや宗教が見直され過去の栄光の回復がうたわれています。私の国イスラエルでも同じです。

聖書やユダヤ教を根拠にして政策が正当化されています。ナショナリズムや宗教は快い単純な言葉で世界の動向を伝えます。この世界における我々の位置を示し人生の意味を教えてくれます。

更にナショナリズムや宗教の物語は絶対的な真実だとされています。何千年も変わることなく伝えられた真実は21世紀の文明でも対抗できないと言われます。

それらの物語は嵐の海でイカリを提供すると主張します。残念ながら懐古的なファンタジーでは21世紀の課題は解決できません。

世界的な気候変動 、AI の導入による数十億の失業者への対策、新しい電子工学の活用法、聖書やユダヤ経典には答えが見つかりません。

それらを書き残した人々は地球の温暖化を知りません。遺伝子やコンピューターも知らなかったのです。

21世紀は恐ろしい時代です。しかし今更逃避を図っても選択肢はないのです。現実から目を背けないで下さい。新たな政策モデルを構築し未体験の課題に立ち向かわなければなりません。

 

この10年の間に生まれた人に対してどんなアドバイスをしますか?

2040年の世の中や雇用の動向など誰も知りません。若者に教えることができないのです。したがっていま学校で何を学んでも40歳になったら通用しないでしょう

どうしますか?私にできる最適な助言をします。精神の健康と感情知能を高めてください。昔から人生には二つの季節があります。学ぶためと働くための季節です。

まず初めのケースでアイデンティティを構築し生活や仕事のスキルを習得します。それを頼りに好きな季節で生計を立てながら社会に貢献してきました。

しかし2040年にはこれらは時代遅れのモデルです。生き残る方法はただ一つ、生きている限り学ぶことを忘れず50歳になっても自己変革を繰り返すことです

そうは言っても変革はストレスで相応の年齢になればたいてい好まれません。十歳の頃ならば毎日が目まぐるしく移ろい、心と身体、他者との関係も変化していきます。

流動する世界で自己の開拓を続けます。しかし50歳のあなたは変化より安定を好みます。ところが21世紀ではそう簡単にいきません。

これまでの自分にしがみつき、安定した職や世界観を守りますか?そんなことをしたら世界はあなたを置いて飛び去ってしまう。

これからの時代に必要なのは心のバランスとレジリエンスです。果のない嵐の海を進むには非情なストレスに耐えて行かねばなりません。

 

今人類は直面している最も重要な課題とは?

データの支配者は誰か?データを操る人間が未来を主導します。現代ではデータが最も重要な資産です

昔は土地が何より大切な資産でした。当時の政治は土地をめぐる争いです。広大な土地が少数の地主に独占され社会が貴族と平民に分断されました。

2世紀前から機械と工場が土地より重視されました。国は産業の統制に照準を合わせたのです。工業の所有権が一部の人に集中し社会が資本家と無産階級に分かれました。

21世紀にはデータの価値が土地や産業の価値を上回ります。国家はデータの流れを支配しようとするでしょう。

データが一部の人に独占されたら人類は個別の階層ではなく異なる種に分断されます。なぜそんなにもデータが重要なのでしょう。

私たちの時代はコンピューターだけでなく人間やその他の生物をハッキングできます。コンピューターのハッキングを超えて私たちは今、新時代に突入しているのです。

人間がハッキングに欠かせない条件は二つあります。情報処理の高度な能力と大量のデータが必要で特に生体データが重要です。どこへ行き、何を買ったかではありません。

体内で何が起こっているか、脳内まで調べます。今まではコンピューターの能力もデータも十分ではなく人間のハッキングはできませんでした。

スペインの宗教裁判もソ連の KGB も身辺を嗅ぎ回るだけでした。生物学を知らなかったからです。コードの計算能力がなければ生化学の領域にたどり着けず人間の感情や選択を操れませんでした。

しかしこれからは違います。情報科学が著しく進歩しました。機械学習と人工知能の発達が目覚ましく、情報を処理する能力が格段に上がりました。

生物学や脳科学の進歩しました。人体のメカニズムの情報を的確に捉えて脳や体内を私たちに見せてくれます。

情報工学における革命と生命工学の革命を融合させれば人間をハッキングできるのです。これを可能にする鍵があります。情報とバイオを統合させるデバイスで生体センサーと呼ばれるものです。

生物学的プロセスを電子情報に転換するのです。その後はコンピューターが記憶し分析します。十分な情報と高い能力をコンピューターが持つとどうなるか。

外部のシステムがあなたの感情や決定や意見をハッキングできるようになります。あなたが誰かを知り誰よりもあなたを知ることができます。デジタル独裁制の世界がすぐ近くまで来ています

 

自由民主主義は死に絶えたのでしょうか?

自由主義は今のままなら滅びます。しかし自己を改造すれば新時代に対応できます。自由主義が他より優れているのは独善的でなく柔軟な点です。

過去一世紀の間に何度も危機を乗り越えては再生してきました。自由主義の最大の危機は第1次世界対戦とファシズムの1930年代、共産主義が台頭した1950年から1970年代です。

今自由主義の危機を感じたら1918年を思い出してください。1939年には1968年がどうだったのか、自由主義は今度も立ち直れます。再生の方策がわかりさえすれば…。

 

どの本も分厚く、しかもホモサピエンス全史とホモ・デウスは上下巻のためいずれも相当な覚悟がないと読了できませんが、内容はギッシリと詰まっていますので、本が好きな方で時間がある方はぜひ読んでみてください。

 

ほな!おおきに!