「すること」から「しないこと」に重点を置き始めました!書評「しないことリストのすすめ」辻信一著







図書館の本日返却された本の中にあった辻信一著 「しないことリストのすすめ 人生を豊かにする引き算の発想」。ここの棚にある本は引き寄せの法則が働いていて、ベストなタイミングでやってくる本ばかり。去年から様々な「しないこと」を決めたばかりで、今回の「しないことリストのすすめ」もそれを確認する上でとても役に立ちました。今年読んだ中ではベスト3に入る良書。思いがけない収穫になりました。

 

戦後からの60年は人口がどんどん増えたために、いつも足し算モードで幸せになると考えられてきました。「足し算」は積極的で能動的で前向きな態度として評価され、「引き算」は消極的で受動的で後ろ向きな態度として軽蔑されるような風潮があります。しかし人口オーナス期に入り、人口がこれからどんどん減少する日本においては「more is more」の「足し算教」は恐ろしいことになります。古今東西の賢人たちは「足し算教」の怖さを説いており、エビクロスというギリシアの哲学者は「less is more」という考え方を唱えてきました。実はこの「引き算の教え」にこそ深い知恵が潜んでいます。いよいよ日本でもこの考え方にシフトしないと不幸なことになるのは間違いありません。

残念ながら既存の業種では売上が右肩上がりになる時代はもうやってきません。新しいものを発明してそれを売るか、もしくは下り坂をいかにそろそろおりるかを考える時代に突入しました。そういった局面で「しないこと」を決めることは幸せに生きる上で、とても大切になってきます。

日常生活で、今日からでも実践できる「しないこと」のリストを挙げてみます。

「絶対」と言わない

「しないこと」リストをつくる上で、「絶対」という言葉を避けることが重要。

提案
まず、普段の日常会話の中で「絶対」という言葉を使わないようにする。

 

時計に依存しない

あなたの人生はふた通りの時間がある。時計を身につけている時と、つけていない時のふたつだ。腕時計をしている時間に負けないぐらい腕時計を外している時間を大切にしたい。それが、きっとあなたの人生をより豊かにしてくれる。

提案
まずは自宅に帰ったら腕時計を外す。休日には腕時計をしない。「時計のない日」を定めてみよう。

 

駆け込み乗車をしない

一見些細な事に見えるかもしれないが、電車を1台見送ると深い満足感を覚えるようになる。

提案
日々の生活にゆとりを持つこと。とすれば早寝早起きは大切で、やっぱり昔の人の言っていたことは正しい。

 

寝る時間を惜しまない

寝るために寝る、眠るために眠る。そうやって得た快眠が、じつは多くの思いがけない効果をもたらすことになる。

提案
睡眠時間は削らない。人生の三分の一を過ごす場所でもある寝室は、できるだけシンプルな空間に。睡眠より大事なことなんてないはず。寝る前2時間は食べない、飲まない、パソコンやスマホを使わないようにしよう。

 

テレビを見ない

ある世論調査によると1日の視聴時間は平均で3時間半以上になる。一生が80年だとして、このペースでテレビを見続けると、人生の12年半をテレビを見て過ごすことになる。そのうち民放でコマーシャルを見て過ごすのは1年と9ヶ月にもなる。

提案
テレビは一家に一台で十分。ただし、食事の時は消すように。代わりに好きな音楽でもかけたらどうだろうか。ラジオもなかなかいい。

 

食事に仕事を持ち込まない

食べ物とは生きものである。そして、食べるとは、いのちをいただくことで、自分自身の命を育むこと。食事の時間は、自分といういのちが、食べべものといういのちを通じて、自分自身もまたその一部である大自然と繋がる時間であり、眼の前の食べものをめぐるすべての人間関係の輪の中に自分を見出す時間でもある。そんな食事に仕事を持ち込んで疎かにしてはならない。

提案
スローフードというぐらいだから、自分のいのちを大切にするライフスタイルは慌てずに、少しずつゆっくりと培っていこう。どうしてもすぐにファストフードの習慣をやめられない人にも、食前の「いただきます」や深呼吸、そしてゆっくりと噛み、味わって食べることを提案したい。

 

自動販売機を当てにしない

保育園も老人養護施設も足りなくて国民を困らせているこの国だが、自動販売機だけは列を作って待つ必要がない。一体、どれだけのゴミが自販機から産み出されるのだろう。そして、どれだけの電気がムダに使われているのだろう。

提案
水筒をお勧めしたい。「すいとう」は博多弁で「アイ・ラブ・ユー」、つまり「好きだよ」ということ。自販機を使わないエコロジカルな暮らしは愛に満ちた暮らしなのだ。

 

明日できることは今日しない(マニャーナ)

中南米の人々がよく使うことわざに、「明日できることは今日するな」というのがある。さらに、「今日できることは明日しろ」という言い方もある。こうしたことわざを言うときには真剣な顔をしないことが大切らしい。

提案
900年前のチベットの聖人ミラ・レーパが人々に投げかけた三つの質問を、あなた自身にも向けてみるといい。その三つとは
「いちばん大切な時はいつ?」
「いちばん大切な人は誰?」
「いちばん大切なことは何?」
あなたはどう答えるでしょうか。ぜひ、じっくり考えてみて欲しい。その上でミラ・レーパ自身の答えが知りたい人は一番最後に書いておきます。

 

 

それぞれの章の最後に書かれていた「しないこと」名言集のコラム4つを紹介しておきます。この中で一番気をつけているのは「相手を変えようとしない」ということ。夫婦生活ではこれが一番大切だと考えています。

コラム
「しないこと」名言集 その1

 

金の貸し借りをしない

金は貸しても借りてもいかん。 貸せば金も友人も失い、借りれば倹約精神が鈍る。

シェイクスピア『ハムレット」
松岡和子訳、ちくま文庫

 

いらいらしない

なによりもまず、いらいらするな。 なぜならすべては宇宙の自然に従っているのだ。 そしてまもなく君は何物でもなくなり、 どこにもいなくなる。

マルクス・アウレーリウス『自省録』 神谷美恵子訳、岩波文庫

 

だれかと同じにしない

だれかと同じように笑ったり、話したりしなくたっていい。 みんなと同じような格好をしなくたっていい。 あなたはあなた、それでいい。

パット・パルマー『自分を好きになる本」 eqPress 訳、径書房

 

人をあてにしない

万のことは頼むべからず。 愚かなる人は、深く物を頼む故に、恨み、怒る事あり。

兼好法師「徒然草」

 

コラム「しないこと」名言集 その2

他人によって運ばれない

高く登ろうと思うなら、自分の脚を使うことだ。 高いところへは、他人によって運ばれてはならない。 ひとの背中や頭に乗ってはならない。

ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った。 氷上英廣訳、岩波文庫

 

自分を責めない

どうして、自分を責めるんですか?他人がちゃんと必要なときに責めてくれるんだから、いいじゃないですか。

アインシュタイン『アインシュタイン150の言葉」平野圭子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン

 

議論しない

議論なんか、いくらしたって物事がはかどるもんじゃありません。行なうべし、言うべからずですよ。片をつけるにはまず実行です、言葉じゃありません。

モリエール「ドン・ジュアン』 鈴木力衛訳、岩波文庫

 

明日のことを心配しない

だから、明日のことまで思い悩む必要はない。 明日のことは明日悩めばよいのだ。 その日の苦労は、その日だけでじゅうぶんである。
『新約聖書』(マタイオスによる福音書) 堀田雄康監修、講談社学術文庫

 

コラム「しないこと」名言集 その3

行為の結果を期待しない

行為はわたしに影響せず、また行為の結果をわたしは期待しない。わたしをこのように理解する者は、行為に束縛されることはない。あなたが成果を求めないとき、成果は得られるだろう。

「バガヴァッド・ギーター」(インド宗教書) 宇野博訳、中央公論新社(『世界の名著1バラモン教典』)

 

劣等感を脱ぎ捨てない

誰も劣等感を脱ぎ捨てることはできない。人生はけっして素晴らしいものではないが、どうせ生き続けなければならないのなら、なるべく上等な劣等感を身につけた方がいい。

吉行淳之介 遠藤知子編『吉行淳之介 心に残る言葉」

 

愚かな者を道づれとしない

愚かな者を道伴れとするな。独りで行くほうがよい。孤独で歩め。 悪いことをするな。求めるところは少なくあれ。林の中にいる象のように。

ブッダ「真理のことば・感興のことば』 中村元訳、岩波文庫

 

人生を恐れない

人生を恐れてはいけない。人生に必要な物は勇気と想像力と少々のお金だ。

チャップリン(映画『ライムライト』)

 

コラム「しないこと」名言集 その4

相手のことを変えようとしない

愛するものと一緒に暮らすには一つの秘訣がいる。すなわち相手を変えようとしないことだ。 気にさわる彼女の欠点を直そうとすると、忽ち彼女の幸せまで破壊することになるからだ。

ジャック・シャルドンヌ『離愁」 佐藤明訳、新潮文庫

 

良いとわかっていない事はしない

悪いとわかっている事をやらないのはもちろん、良いとわかっていない事をしない。これがよい科学の原則だ。

藤村靖之「テクテクノロジー革命」 大月書店

 

誰ともくらべない

本当の安らぎを得るためには、眼を自分の外側でなくて、内側に向けることです。そして、自分が自分になることです。「いまここに だれともくらべない はだかのにんげん わたしがいます」

相田みつを『おかげさん』 ダイヤモンド社

 

所有しない

「私の所有物は何もない」と考えられれば、すべてがあなたのものとなります。

サティシュ・クマール「君あり、故に我あり」 尾関修・尾関沢人訳、講談社学術文庫

 

 

※文中の問いかけ、ミラ・レーパ自身の答え。
「いちばん大切な時は、今」
「いちばん大切な人は、今、ここにいる人」
「いちばん大切なことは、今、ここにいる人によくあること」

ほな!おおきに!