書評「ニュースで学べない日本経済」大前 研一 著







読書家の友人からオススメいただきました。大前研一氏の本は相当読んでおりますが、この「ニュースで学べない日本経済」は大前視点で日本の経済の現状を語ってくれています。これからの日本で、どう生き延びるかを知るには必読の一冊。

巻頭では「過去の経済原論が通用しなくなった今、どうすべきか」という一文から始まります。今の日本は企業・個人は投資も、消費もしない「低欲望社会」に入ってしまい20世紀の経済原論を振り回しても市場は全く反応しなくなっています。

大前氏は以前からアベノミクスは全く意味がなく効果はないと訴えておられましたが、最近それが実証されています。景気は良くならず物価も上がらなければ給料も上がりません。

世界的に言えば新卒一括採用の日本企業に優秀な人材は来ません。インドのITに強いIIT(インド工科大学)の新卒の年俸は4万ドル、最高で16万ドル(2,000万円)で月給23万円の日本の初任給では逆立ちしても無理。桁がひとつ違うのに誰が来るというのでしょうか。これからは企業は個人の能力を見て、適正な報酬を払って一人ずつ採らないと成長はありません。

日本が生き残るヒントはイタリアにあります。イタリアには小さな村なのに世界相手に1500億円稼ぐビジネスモデルがあります。技術や職人技という点では決して日本も負けてはいません。ノウハウがないだけ。大前氏は「日本という国は、今非常に迷走しています。3本の矢などという意味不明なことを言っている人や国は相手にしないで、個人、企業、また地方は自分たちでどうすればいいかを自分の頭で考える。これが最も大切」とアベノミクスを痛烈に批判しながらこれからどう生きていくべきかを指南してくれています。

また大学を出たらすぐ就職するのも考えものだとも言っています。日本では卒業後就職しないと軽蔑されますが、海外ではむしろその逆で就職が早々に決まった人のほうが「窮屈な生活に押し込められて可哀想」という見方をされます。

これから就職する若い方は、就職活動でいい結果が出なくても焦る必要はありません。これから若手不足、人手不足の時代がやってきます。実力さえつけていればいつどこでも働ける環境になります。急ぐことはありません。1,2年世界を廻って楽しんでから就職しても遅くはありません。筆者の子どもが就職する10年後にはおそらく海外のパターンが主流となっている気がします。

この「ニュースで学べない日本経済」は社会人の方はもちろん、就職前の学生の方にもぜひ読んで欲しい一冊。決して難しくはありませんので手にとってみてはいかがでしょうか。ちなみにこの本、表紙のカバーが大前氏が腕組みしてなければ、もっと売れると思います…。大前氏が東京都知事になっていたら、もっと日本は良くなっていたと思います。本当に残念でなりません。

内容紹介
これが「大前視点」から見た、日本・世界の「現実」だ!ニュースやネットの情報で満足できない人のための「本質」がわかる1冊!!

【Contents】
■序章 今求められる教養は「本質を見抜く力」
・ 疑問を持ち、調べ、質問する能力を身につけよ
・ 「沈みゆく船」から自らの意思で脱出できるか ほか

■第1章 世界と日本経済の「3大リスク」
・ 【リスク1 中国経済の減速】中国の「第13次5カ年計画」は、すべて絵に描いた餅である
・ 【リスク2 アメリカの利上げ】アメリカの一極繁栄がもたらす世界不安
・ 【リスク3 地政学リスク】荒稼ぎするISとテロの拡大、ロシア軍事作戦公開の思惑 ほか

■第2章 好調経済国家・地域に注目せよ
・ 企業の勝ち目は「人口ボーナス期」の国にあり
・ 成長著しいメキシコとフィリピンを見逃していないか?
・ 「ホームレスマネー」が流れる場所に勝機あり ほか

■第3章 染色体が異なる21世紀の企業たち
・ グローバル企業のM&Aと節税対策の実態
・ 日本の法人税率は90%にしなさい
・ 成熟時代のビジネスモデル「アイドルエコノミー」

■第4章 日本経済「低欲望社会」をどう生きるか?
・ 日経新聞を読むと世界が見えなくなる
・ 国民よ、日本経済を駄目にした「彼ら」にもっと怒れ!
・ 企業は「やけっぱち消費」の金を有効活用せよ ほか

■第5章 迫りくる危機にどう立ち向かうか?
・優秀な人材は世界から「一本釣り」せよ
・自分の頭で考えよ。地方、企業、個人は国を相手にするな!
・自分なりのシナリオを描け! 大前研一からの宿題 ほか

ほな!