以前、築地朝食会@名古屋という寿司を食べながら本の著者を招いて交流するというイベントを開催していました。元々はコンサルタントの美崎栄一郎さんが東京で開催しており名古屋で暖簾分け?して開催していました。
その時、招いた著者の一人が川上徹也さん。文章とマーケティングのプロフェッショナルで何冊も本を出版されておりベストセラー作家でもあります。コンスタントに本を出版されており、先日「臆病ネコの文章教室」を発売するにあたり、事前にメッセンジャーでご連絡をいただきました。その際に数項目の内容を抜粋した試し読みPDFをいただきましたので今回はその項目だけでしか読んでいませんがかなり役立つ内容だったので書評を書かせていただきました。
タイトルと表紙はかなり柔らかい癒し系になっていますが、内容は「社会心理学」「行動経済学」「認知神経学」などの行動科学分野での研究に基づいたエビデンスのあるものを選んでおり、確実に効果があります。
一般的に言葉には「話し言葉」と「書き言葉」があります。この2つの大きな違いは「話し言葉」は話す本人のキャラクターに大きく影響されること。例えば同じ文章を話していても佐藤健さんのようなイケメンが話すのと蛭子能収さんのようなオジサンが話すのでは全く印象が違います。
一方、「書き言葉」である文章はよほどの有名人以外は書き手のキャラクターに依存しません。つまり文章だけで判断してもらえます。ちょっとしたテクニックを使うだけで相手を思う通りに動かすことができます。
以前紹介したDaigoさんの「人を操る禁断の文章術」も同じ趣旨の本ではありますが、「臆病ネコの文章教室」の方がより具体的にエビデンスに基づいた実例が書かれているためわかりやすいと思います。
ではいくつかの例を紹介します。
ケース1 催促したいけど催促できない人のための方法
それは「あなたは少数派です」ということを伝えること。これは行動経済学でいう「ナッジ」を利用します。2008年、イギリスでは税金の未納者が多くて困っていたのですが督促状にたったワンフレーズ入れるだけで回収率が57%から86%にあがりました。そのワンフレーズとは「大多数のイギリス国民は税金を支払っています」という文言。
「え?そんな簡単なこと?信じられない」と思った方もおられるかもしれませんがこれが「ナッジ」を使ったテクニック。「あなたは少数派である」という強調文を加えるだけで「自分も払わなきゃ」と思わせることができました。
いつも締切を守らない人がいる場合、督促のメールに「明後日○月○日締切の書類の提出につき、すでに95%の方に提出いただきありがとうございます。まだ未提出の方はお急ぎください」と一言加えるだけで一気に提出率が上がりますのでお試しください。
ケース2 弱点のある商品を売れない人のためのテクニック
「弱点をウリに」して伝えましょう。短所と長所をうまく結びつけることができたら長所だけを並べるよりも大きな魅力になることがあります。
例えば下記のようなレストランの広告の場合どれが評価が高かったでしょうか。
①くつろいだ雰囲気のお店です
②くつろいだ雰囲気のお店ですが専用駐車場はありません
③狭い店ですがその分くつろいだ雰囲気です
結果、一番評価が高かった広告は③となりました。①は長所のみ訴求、②は長所とは関係ない短所を明示、③は短所とそれに関連した長所を明示しており③が最もプラスの効果が高くなりました。コツとしては誰が見ても明らかな欠点や短所を認めた上で、それに関連付けられた長所やメリットを伝えるということ。
この手法はメルカリなどのフリマアプリでモノを売るときにも使えます。例えば傷や汚れがある場合はそれを先に明示して、その傷や汚れが使用するのには全く問題がないことを伝えるとたいてい売れます。ポイントは先に短所を伝えて後から長所を伝えること。逆にすると短所の印象が強くなってしまいますので順番には注意しましょう。
ケース3 オススメのプランを選んでもらえない方のテクニック
「デフォルト」を設定してみましょう。選択肢がいつもある場合、自分が選んでほしい選択肢を選んでもらえないことも多々あると思います。ただし、ちょっとしたテクニックを使えば確率が格段に上がります。自動車保険の場合、いくつか選択できるようになっていたとしても70〜80%の人がデフォルトになっている項目を選ぶということがわかっています。
まずはオススメのプランをデフォルトにして、それ以外を追加項目にしてみましょう。一気に確率が上がります。
ケース4 永遠に決めてもらえない方へのテクニック
人間は選択ストレスを軽減すれば決めやすくなります。似たような商品がたくさんあると選ぶのにストレスがかかり結局買わずに帰ってしまうことは多々あります。品数が多ければいいという訳ではありません。セレクトショップが人気なのは目利きのできるバイヤーが選択肢を絞って店頭に商品を並べているから。24種類のジャムを並べたブースト6種類のジャムを並べたブースではブースに立ち寄る人数は種類の多いブースの方が多いのですが購買率は種類の少ないブースのほうが6倍以上売れるというエビデンスがあります。
もし、あなたがモノを売っているなら思い切って売れるだろうと予測される商品を数点に絞って展開してみてください。売上が一気にあがるはず。多様性の時代ではありますが、選択ストレスはできる限り減らした方が売上に繋がります。
以上、抜粋のほんの一部だけ紹介いたしましたが、これだけでも効果がありそうな内容ばかりで他にも様々なテクニックが掲載されています。Amazonでの販売のほか、書店でも店頭に並び始めていると思いますので文章で人を思い通りに動かしたい方はぜひ読んでみてください。投資した金額はすぐに元が取れます。
ほな!おおきに!